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vol.7 「無愛想だって人間だもの。」
「撮影打ち合わせ」。それは2人を撮影する上で、ものすごく大事な時間。「カメラマンとの打ち合わせって一体何をするんですか?」と心配げに聞いてくる人も多いが、答えは簡単。「おしゃべり」である。 ウェディングフォトグラファーの中にも、照れ屋や人見知りはいる。何を隠そう、私もかなりの人見知りである。(一度会った人とはおしゃべりが止まらなくなるぐらいしゃべるので、馴染むのが早すぎるとも言われるけれど。)結婚式当日、顔も知らないカメラマンに「はい、笑ってくださいねぇ〜」と言われて、上手に笑える人がいるとすれば、モデル経験でもある人だろう。もしくは、前日、鏡の前で100回ぐらい笑う練習をしたか。初対面の人間に向ける笑顔と、一度会ったことのある人間に対する笑顔。これは、もう「ヌケ」が違うのである。 ただ、この「ヌケ」を作るには、打ち合わせの内容による。とにかく、たわいもないことをしゃべるだけでいいのだ。盛り上がること。距離感をちぢめること。「私」がどんな人間か、「2人」がどんな人間か、お互いに理解することで残る写真は歴然と変わる。空気感は驚くほど写真にうつりこむのだ。だから、私にとっても、2人とっても打ち合わせは、本当に必要な時間だと私は考える。 その日の新郎→びっくりするぐらいの、無愛想。 何かいやなことでもあったのか、とにかく会った瞬間からふてくされた感じだった。「写真なんか、興味ないぜ」ってな感じ。「こんにちは」と私が大きな声でいうと、彼女だけ「こんにちは」と可愛らしく挨拶。彼は微妙に頭をさげるだけ。小心者の私はちょっぴりビビりながら、「彼の心をつかむまでは、今日の打ち合わせは終わらせないぞ」と心に誓う。そして何度も彼の目を見て質問した。 「タキシードは何色なんですか?」「どんなところが気に入って?」「けっこう、緊張するタイプですか?」「友達もたくさん招待されてるんですか?」「人前でオナラしたことあります?」 と、いつもは聞かない下世話なことまで、ムキになって質問した。なぜなら、いくら彼に答えてもらいたくて質問しても、すぐに彼は彼女のほうを向いて、あごをクイっと突き出すのだ。 「お前が答えろよ」 という具合に。そして、彼女は申し訳なさそうに、 「あ、スタンダードな黒です」「えーっと、白だとキザかなあと思って」「そうですね、私のほうが緊張するかもしれませんね」「あの、たくさんよびたかったんですけど、どちらかというと親戚が多いですね」「・・・。」 君に聞いてるんじゃなああああああい!!!!!!!!!! と悪くもない彼女に、こぶしをふりあげる。(うそ) 私の頭の中→→→→→→→何でだろう。何でだろう。何でだろう。何でだろう。 私のことキライ?私のことキライ?私のことキライ?私のことキライ? と机の下で、人差し指と人差し指をくっつけながら、口をとがらしてみる。 私は油汗をかきながら1時間半、かなりの勢いでしゃべった。若手芸人か?というぐらいさむいギャグだって飛ばした。途中、失礼ながらウソをついてトイレにまでこもり、作戦を練り直したりもした。しかし。ウソのような本当の話。 彼の声を耳にすることはなかった・・・。 お手上げ状態になった私はしょうがなく、最後は桂三枝ばりに転倒して(うそ)、泣く泣く打ち合わせを終えた。 果たして彼は私に笑顔を見せてくれるのか。 前日の夜、彼を笑わすためのイメトレをしていた私はちょっと寝不足気味。私がさむいことを言ったらなぐられたりして。いやん。 会場に到着。メイク撮影ができない会場だったため、今か今かとメイクルームの出口で待つ私。どきどきどきどき。こんなに緊張することは、あんまりないのに。納得する打ち合わせができなかった2人を撮影する日は、ちょっと緊張する。私も打ち解けていないからだ。でも。 こんなことじゃいけない!! と自分を奮い立たせる。そして、2人登場。目のぱっちりした彼女は、まるでお人形さんのようにかわいかった。彼ばっかりに気をとられ、彼女のことを忘れかけていた私は、今日の主役は彼女だということを思い出し、シャッターをきる。あぶない、あぶない。よかった思い出して。マジで。 そして、ポーズ撮影。 彼女は笑顔。そして彼は、無表情。 う〜〜〜〜〜〜〜。笑ってくれえええ。(泣) でも、ここであまり無理強いをして、時間をもらいすぎても介添えさんに嫌な顔をされる。ある程度シャッターをきった後、披露宴会場へと移動する。(この日は披露宴のみ。) 披露宴では、友達も少なく会社関係や親戚の方が多かったせいか、大笑いするような場面も少なく、彼の笑顔をファインダー越しに待つ→あきらめる、待つ→あきらめる、の繰り返し。「おーい、上司ぃ、もっと面白いこと言えよぉ」と何の罪もない上司に恨みをいだきつつ、とうとう披露宴も中盤にさしかかり余興の時間になってしまった。 このままでは、「彼がとってもつまらなかった結婚式」が写真として残ってしまう!焦る。彼女のためにも、彼が幸せな表情をしたその瞬間を、絶対に逃さないようにしなければ!と変な使命感にかられる。余興の時間も、難無く無表情に終わり、がっかりと肩を落とす。楽しむんだ、新郎!笑うんだ、新郎!そうじゃないと、君は一生後悔するぞ!(何で?) すると私の思いが伝わったのか、数少ない彼の友人が彼のもとへとビールを注ぎに来る。彼が笑った。 笑えるじゃぁあああああああああん!!! ダウンタウンの浜ちゃんに負けないぐらい、彼の頭をひっぱたきたい衝動にかられつつ、連続撮影。 ヵシャーンヵシャーンヵシャーンヵシャーン。 え、うるさい?ちょっと目立ってしまったようだが、気にせず続ける。 あー、これで少し安心。やっぱり友達といる時は、笑うんだな。よかったよかった。彼も人間だったよ。てことは、やっぱり私の打ち合わせのシャベリはいけてなかったんだな、とまた落ち込む。 その後は、お酒も入り、ちょっと頬を赤くした彼は、幸せそうに披露宴を楽しんでいた。(ように思うことにする。) 宴もたけなわ。楽しい時間はあっと言う間に過ぎるものですね。 (司会者お決まりの言葉) 私にとってはかなり長く感じた披露宴であったが、とうとう最後の謝辞へと進む。彼なりに一生懸命に本からパクった、棒読みの挨拶も終え、送賓も無事終了。何か物足りなさを感じながらも2人のもとに、いつものように最後の挨拶をしに行く。彼の第一印象が強烈だったこともあり、私にとっては思い出深い撮影となった。すると、全て終えた2人の表情は、ホっとしたような、とても優しい顔だったので、ここぞとばかり「最後に1枚!」といって、シャッターをおす。 彼→満面の笑み。 できるじゃああああああん!! 最後のそれが、最高の一枚となる。 そして彼は一言言った。(私の名前を仮に鈴木としよう。) 「鈴木さん、写真すごく楽しみにしてます。ありがとうございました。」 えっ、楽しみに?私の写真を?君が? 帰り道の私→→→→→→→→→→→やっぱり号泣。 嫌われてなかったんだ、嫌われてなかったんだ。わーい。 伝わったんだ、伝わったんだ。わーい。 その日は東京から電車で3時間かかる会場だったため、ビールは電車の中で。言うまでもなく、格別の味わいであった。2本目の空き缶を手でつぶしながら「終わりよければ、全てよしだな。」と何度もひとりうなずきながら上機嫌になる。 2人が心を開いてくれたと(勘違いの時もあるけど)感じた日、それは本当に嬉しい日。ウェディングフォトグラファーは、これがあるからやめられない。
by hanayomedamono
| 2004-09-06 22:10
| 新郎
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