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「新郎だって主役だもの」 vol.3
「挙式当日のメイクルーム」ーそれは2人の関係性が如実に表れる、ウェディングフォトグラファーにとっては、素の2人をじっくり観察して当日の撮影戦略を練る重要な場所でもある。2人の会話によって、彼と彼女の上下関係は自然と伝わる。彼女がきれいになっていく姿を横目に、「きれいだよ」とささやきかけているような、間違いなく尻にしかれている新郎もいれば、進行の最終チェックや謝辞の暗記、スタッフへの挨拶などで忙しく動き回る個人プレーの新郎もいる。そもそも新郎というのは第二の主役にもかかわらず、支度時間は10分もあれば十分だ。彼女と一緒に会場入りしたものの、暇を持てあまし、余計に緊張しているような新郎は案外多い。 今日の新郎。それは、もやしっこのような華奢で可愛らしい新郎であった。 「おはようございまーす」とメイクルームの扉を開ける。 ・・・。 正座をしていた。 え?正座? 彼はメイクする彼女の横に(下に?)正座させられていた。しかし、怒られている風もなく、自然というか余りにも板についた感じで彼は彼女の子分のようにぴったりとくっついていた。打合せの時点で、彼女が実権を握っているのは明らかであったがまさかここまでとは。そんな2人の師弟関係?を横目に撮影を始める私。 彼女は彼に言った。 「あ、下にブーケ届いていると思うから取ってきてよ、○○くん」 「はい」 彼はすばやく腰をあげ、あっという間に姿を消した。ていうか「はい」って・・。これはプレーなのか?こういうプレーがあるのか?と少しあっけにとられる私。 5分後、彼は白いバラのラウンドブーケと彼女の髪飾り、そして彼が胸につけるブートニアを抱えて戻ってきた。 「あれ?頭につける花の数が足りない!やだぁ。ちょっと言ってきて○○くん。 私ちゃんと注文したよね?」 「うん。してたよ。」 「じゃあ、しっかり言ってきて」 「はい」 再び下に行く彼。 「言ってきた」 「ちゃんとこっちのミスじゃないって言った?これで追加料金とか取られたら困るからね! そこまでちゃんと釘刺してくれた?」 「いや、えっと、そこまでは」 「何で?だから○○くんは甘いんだよ。つめが甘いんだよ!もう1回!」 「ごめん」 その時ドアが開き、お花やさんが入ってきた。 「ほら、○○くん言って!」 「きちんと注文しましたよね?これで追加料金とかとられたら困るんです」 「大変失礼いたしました。こちらのミスです。追加料金なんてとんでもない。」 と、ここまでの会話を聞きつつ「花1個で追加料金はないだろう!」と心の中で鼻から息を吐きながらも「いや、でも結婚式ってそういうことがありえる日なのかも」と思い直す。 1時間後、ついに花嫁完成。私の予想は的中する。 彼女は大満足の笑顔。「かわいい~!」を連発。彼は彼女に「えりりん〔仮名〕きれい?」と何十回も聞かれ、その度に満面の笑みを浮かべ「きれいだよ」と答えた。私はその彼の健気さに涙が出そうになった。えらい!えらいぞ、もやし!何てお似合いの2人なんだ!ていうか君しかいない!彼女には。 そんな不思議な関係の2人の結婚式は笑いあり、涙あり、すべてが順調に進み、友人たちもとても楽しそうで、あたたかな結婚式であった。彼女が転ばないように移動中のドレスを持つ彼、フラワーシャワーの後の花びらをほうきで掃く彼、披露宴中も彼女のグラスが空になると、小突かれながらビールを注ぐ彼。(これらの仕事は通常まわりのスタッフがやります。念のため。)その仕事に少しでもミスがあれば、彼女からの一喝は容赦なく飛ぶ。 「新郎って何だろう」と、こんなにも考えさせられた1日は初めてだった。 しかし、ドラマティックな結末は披露宴の最後に起こる。 感動の花束贈呈も終わり謝辞の時間。通常、謝辞とは新郎の父の後に新郎が最後にぴりっとしめる、ゲストへの感謝の気持ちをのべるもの。しかし、今日はしっかりものの新婦もマイクを手にした。彼女は親への感謝とゲストへの感謝の気持ちを述べた後、こう言った。 「私たちは本当に仲が良くて、けんかをしたことがありません。 そんな彼に出会えて私はすごく幸せです」 ・・・・・・・。 けんかはないかもな。でも。 その表現はあっているかな。あっているかな、えりりん?(私の心の声) 前々回の花嫁同様、また彼女の横に小走りで駆け寄り小さく突っ込みをいれたい衝動に駆られながらも、必死に体をおさえ、私は彼のスピーチに耳を傾けた。すると(私の見た範囲では)朝からちょっと、というかだいぶ頼りなげで情けなかった彼が、何と白馬に乗った王子様になったのである。(たぶん白タイツが似合うな彼。) 「彼女のことを絶対に幸せにします!」 聞いたこともないような彼の腹部からの叫びは、ゲストからのどよめきとともに大きな拍手の中へと消えていった。 私→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→号泣。 またやってしまった。やられた。目の下はすでに真っ黒。ウォータープルーフのマスカラを買おうと思いつつ面倒くさがってしまった自分を責める。あー。塗らなきゃよかったこんなもの。主役でもないのにちょっと目をぱっちり見せたいと思った私のバカバカっ。ハンカチで鼻をかむ。 今日は近くに好みのバーがないようだったので、フランチャイズのプロ○トで我慢する。彼をあそこまで夢中にさせる彼女は一体・・・。何なんだ、その魅力って。あんなに愛されているなんて。教えてほしいじょおおおおおお。別に失恋したわけでもないのに、やや嫉妬の念に駆られる。ビール3杯で席を立つ。 ウェディングフォトグラファーは日々、女力の研究でもある。
by hanayomedamono
| 2004-07-21 16:54
| 新郎
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